検証6では、MVCDをDVDプレイヤーで再生する際にたまに発生する、スローモーションになる現象(=「カクカク現象」)の原因を検証します。検証に使用したDVDプレイヤーは、sonyのDVP-F25です。
【検証6】

 高画質VCDを追求する課程において、当然のごとく、ビットレートを上げるようになっていきました。しまいには、1枚のCD-Rに30分番組がギリギリはいる程度のビットレート(3300bps)まで上げていきました。それと共に、映像が妙にカクカクして、音声と共にスローモーションのようになってしまう現象が多発しました。多発といっても、なるときもあれば、ならない時もありました。

 そもそも高画質を追求したいのは、視聴の際のブロックノイズがうっとしかったからです。いくら画質をよくしても、映像がカクカクしてはブロックノイズ以上のストレスを感じてしまいます。そこで、なぜこのような現象が起きるのか考えてみました。

 初めは、VCD CHECKERを通さない(注:そうすることで、冒頭の映像のノイズを回避できる)ことによる影響かと思いました。そこで、敢えてVCD CHECKERを通して焼いて再生を試みました。しかしながら、VCD CHECKERを通して焼いたモノでも、映像がカクカクする現象が起きてしまったのです。

 続いて思い浮かんだのが、映像の転送速度が追いついてないのではないか(=今回の仮説)ということでした。普段ビットレートと読んでいる数値は、1秒間にどのくらいのデータを処理するかという数値です。例えば1150kbpsならば1秒間に1150k(キロ)b(バイト)のデータを転送するだけの画質データを持った映像ということになります(p=per,s=second 1秒あたり、の意)。ビデオCDの標準規格が1150kbpsである以上、その2〜3倍ものデータ量をプレーヤー側が転送できないとしても不思議ではありません。

 そこで、今回、「カクカク現象」が確認された映像ソースで、様々なビットレートでエンコードし、現象が起きるか起きないかを検証してみて、現象がビットレートによって引き起こされることを立証してみようと思います。また、VBRである以上、平均ビットレートだけでなく、maxビットレートの違いにも着目してみようと思います。
 ソースは、NHK教育番組「ふしぎいっぱい」から。冒頭のオープニングはクレイアニメーションですが、本編は主にたくさんの木々とたくさんの子どもたちが登場してくるという、デジタル映像が苦手とするものです。

【結果6】

No
設定
解像度
AVG
max
min
現象
寸評
01
60分 352x480 1650 2500 500 カクカク現象は起きなかった。
02
60分 352x480 1650 2000 300 カクカク現象は起きなかった。
03 45分 352x480 2350 3500 500 アニメ部分はセーフ。本編はアウト。
04 45分 352x480 2350 2530 300 カクカク現象は起きなかった。
05 60分 352x480 1650 3500 300 本編でたまに現象が起きた。
06 30分 352x480 3300 4000 500 アニメ部からほぼ全部現象が起きる。

【考察6】
 さて、現在ともぞうは、エンコードのビットレート設定を次のようにしています。

・30分番組・・・VBR3300
・45分番組・・・VBR2350
・50分番組・・・VBR2000
・60分番組・・・VBR1650
・90分番組・・・VBR1100

 この数値の根拠は、「エンコードした時に約800MB(=CD-R1枚にギリギリ収まるサイズ)」になるように計算したものです。仮説が正しければ、「カクカク現象」は、高ビットレート時に起こるはずです。
 まずは60分番組用の設定(01:VBR1650-max2500)にて試してみました。結果はセーフ。カクカク現象は起きませんでした。この程度の設定では転送速度は大丈夫のようです。一応maxレートを下げたもの(02:VBR1650-max2000)も検証してみましたが、現象は起きませんでした。

 次に45分用の設定(03:VBR2350-max3500)でやってみました。ここでアウト!冒頭のクレイアニメーション(=色の数や動きが少なく、高ビットレートを使っていないと思われる)の部分は問題ありませんでしたが、本編に入り、大勢で森の中に入っていったあたりからほぼずっと「カクカク現象」が起きてしまいました。とても視聴に耐えうるレベルではありません。

 そこで、平均ビットレートは変えずに、maxビットレートだけ下げて(04:VBR2350-max2530)やってみることにしました。すると現象は起きず。仮説通りの結果が起きています。さらに、先程無問題だった60分設定について、敢えてmaxレートを上げて(05:VBR1650-max3500)チャレンジしてみました。すると!やはり本編において、一部ですがカクカク現象が起きました。

 ここまででも十分ですが、さらにビットレートを上げ、30分用の設定(06:VBR3300-max4000)について検証しました。ここまでくると、今までセーフだったアニメ部においても現象が発生し、ほぼ全ての部分において現象が発生していました。

 というわけで、高画質VCDの追求の際の注意点として、手持ちのプレイヤーの転送限界速度を知っておく、ということが言えそうです。また、平均ビットレートだけでなく。maxビットレートの上げすぎにも注意する必要がありそうです。(04/04/02)